【第3回】日沖健氏 日沖コンサルティング事務所代表 vol.2
Date 2018.12.03
谷家理香の周りの素敵な生き方をされている方達に、その方が考えるWell-Being Lifeとは?をインタビュー形式で伺った内容をご紹介する、「あの人のウェルビーイング」。第3弾は、谷家の高校の同級生である日沖健さんにお話を伺いました。
プロフィール:
経営コンサルタント。日沖コンサルティング事務所代表。昭和40年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・JXTG)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、平成14年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。産業能率大学総合研究所・兼任講師。
→谷家理香氏 株式会社ウェルビーイングTOKYO代表取締役
→【第1回】高橋百合子氏 E.OCT株式会社代表取締役
→【第2回】エドワード鈴木氏 鈴木エドワード建築設計事務所代表
→【第4回】杉山文野氏 トランスジェンダー活動家
→【第5回】Rajshree Pathy氏 Rajshree Group of Companiesチェアパーソン兼マネージングディレクター
起業は最もチャレンジング。エベレスト登頂と同じ。
ー日沖君の使命は、起業する人が、自分のやりたいことを実現できて、なおかつそれがお金もまわって人もついてくる、という状態を実現するための手段なり手法なりを考えて、世の中に広めること?
そうですね、そして若い人が、「起業家って素晴らしい」、「ビジネスって素晴らしい」と思って挑戦するようになって欲しい。日本ではなぜか、優秀な人がなる職業が決まっていて、お医者さんや弁護士や、せいぜい政治家や官僚、あとはyoutuberやゲーマーになる。アメリカだったら優秀な人は事業を作りますよね。無理なく自分のやりたいことができて、それをビジネスにできる方法があったら、もっと多くの人が挑戦するじゃないですか。
ー「起業」というのが大事なんですね
そう、やっぱりビジネスを作り出すのが一番難しいことだからですね。新しい事業を作り出すことだけではなく、既存の事業に人を惹きつけて、人について来てもらい続けることももちろん難しいこと。ですが難易度で言うと新しいビジネスを作ることのほうが既存を継続することよりも難しいから、起業をすることを対象にして考えています。
ー起業が大切だと思っているのは、それをすることが難しいことだから?難しいからこそ、それに挑戦したいということですか?
やっぱり難しいからですね。僕はコンサルタントという仕事柄、いろいろな社長さんに会うんですね。サラリーマン社長もいれば起業家の社長もいますですが、仲良くなると彼らに「あなたは生まれ変わったらなにをやりたいですか?」って質問するんですね。サラリーマンの人はだいたい「芸術家になりたい」とか仕事と全然違うことを言うんです。ところが成功した起業家に聞くと「起業家しか考えられません」って言うんです。やっぱりいろいろ苦労して、新しいアイデアを作り出して、一からお客さんを作って、事業を大きく育てていくことが一番難しいということを知って、その難しいことを成功した体験をした人っていうのは、生まれ変わってももう1回やりたいと言うんですね。一番難しいことだっていうのをわかっているから。エベレストと富士山だったらやっぱりエベレストを制覇したいじゃないですか。
幸せだと思う瞬間
ー日沖君の中ではそのエベレストが起業なんですね。かなりクリアにものごとを整理されていますね。次の質問ですが、一番幸せだと思う瞬間はどんな時ですか?
企業研修や大学院の講義で受講生から「日沖さんの話を聞いてもっと勉強したくなりました」と言われたときです。
ー起業に対する価値が最も高いので、それに対する手助けができたときが一番喜びを感じるということですね?
そうですね。僕の一番好きな言葉でWilliam Arthur Wardという心理学者がいて、彼が言っているのが「The mediocre teacher tells. The good teacher explains. The superior teacher demonstrates. The great teacher inspires.」という言葉があります。大学院の授業ってせいぜい2時間半の授業が9週間しかなくて、その中で教えられることって限られているじゃないですか。そんな中で、僕の話を聞いてもっと勉強したいと思ってくれたらうれしいし、コンサルしている先の人の中に起業したいと思っている人がいて、その人が僕の話を聞いてもっといろいろな視野を広げたいと思ってくれたり、こういう事業を起こそうと思うというやる気になってくれて、インスパイアをする状態ができたときに、僕の仕事が意味があったな、と思えますね。
ーその瞬間が幸せと感じるのですね。
資本主義的な答えすぎるかな?
ーいえ、すごく新鮮な答えです。仕事の中に喜びを見つけられるっていうのはすばらしいことだと思います。
起業家だけじゃなくて、好きなことをしている起業家の下で働いている人も幸せになりやすいんじゃないかな。その人と一緒に一丸となって新しい価値を作っていくメンバーになれるっていうのも幸せなんだと思う。
理論と実践の融合
ー世の中に新しい価値を生み出したいと思っている人を助けたい?
私なりに世の中に貢献できる方法は、ビジネスのことを教えること。独立したときの考え方として、理論と実践の融合をすごく重視しています。学者の人は理論を教えるわけじゃないですか。「あの人は理論はわかっているけれど実践はからきしだめ」、とか、あるいは「何十年も営業をしていた人は実践はできるけれども理論がだめだ」、とかということがよく言われますよね。Kurt Lewinという心理学者が、「よい理論ほど実践的なものはない」と言っているんですが、やっぱり実践を通して理屈を見つけること、あるいは理屈を見つける中で実践を行うこと、この両方ができる人が成功すると思う。この両方を融合して、実践でも役立つ技法を作ることが大切だと思っています。
ー理論と実践を融合させるという考え方は、どのタイミングで思い始めたのですか?
僕が卒業したアーサー・D・リトルはコンサルティング会社がやっているMBAなので、そこで教えている教師陣の半分以上がADLの現役のコンサルタントで、実務のコンサルタントをした後に大学院で教えて、またコンサルタントに戻ったりしている人が多かったんです。日本だとコンサルタントをある程度やった後に教授になるパターンが多いけれど、それとはちょっと違うんですね。僕はコンサルタントとして実践もしているし、大学で教えることもしている。この両輪を行っていることに価値があると考えています。