【第2回】エドワード鈴木氏 鈴木エドワード建築設計事務所代表 vol.3
Date 2018.11.20
谷家理香の周りの素敵な生き方をされている方達に、その方が考えるWell-Being Lifeとは?をインタビュー形式で伺った内容をご紹介する、「あの人のウェルビーイング」。第2弾は、初回にインタビューを引き受けてくださった高橋百合子さんの旦那さまでもいらっしゃる建築家のエドワード鈴木さんにお話を伺いました。
プロフィール:
建築家。鈴木エドワード建築設計事務所代表。
1947年生まれ。1966~71年ノートルダム大学建築学士。1973~75年ハーバード大学大学院アーバンデザイン建築学修士。1974年バックミンスター・フラー・アンド・サダオ、イサム・ノグチスタジオ、1975〜76年丹下健三・都市建築設計事務所を経て、1977年鈴木エドワード建築設計事務所設立。
東日本さいたま新都心駅や渋谷警察署宇田川派出所、JR東日本東京駅構内 銀の鈴待合広場公共施設から「鴨川の家」など個人邸、集合住宅まで幅広く手がけ、グッドデザイン賞、エコビルド賞など数々の賞を受賞。科学、原子構造、哲学、形而上学などにも造詣が深く、TED×Tokyoでスピーカーを務めている。著書に「GOoD DESIGN 神のデザイン哲学」がある。
→谷家理香氏 株式会社ウェルビーイングTOKYO代表取締役
→【第1回】高橋百合子氏 E.OCT株式会社代表取締役
→【第3回】日沖健氏 日沖コンサルティング事務所代表
→【第4回】杉山文野氏 トランスジェンダー活動家
→【第5回】Rajshree Pathy氏 Rajshree Group of Companiesチェアパーソン兼マネージングディレクター
宇宙はポジティブにデザインされている
ー次に大事なのが「人間関係」。細胞レベルでの関係性といつもおっしゃっていますが、その中で人間関係は大切なものですか?
我々の体内には数えきれないほどの細胞が協力し合って生命を保ってくれていて、もしケンカでも始まったら我々は生きていられないわけですよ。脳がない細胞レベルでそういった協力体制が取れるのであれば、脳がある我々はもっと簡単に協力体制をとれるはずなのに、協力体制ができていないのが現状。だけどやっぱり、宇宙、神が愛であるとすれば、愛・人間関係っていうのが一番大事なわけですよ。
宇宙はやっぱりポジティブに設計されていると思うんですね。なぜかというと愛から生まれてきたから。でなければネガティブになってしまって、生きている意味がない。進化っていうものは常に次のレベルに進化していくわけであって、逆の退化をするというのは、宇宙の意味がない。宇宙がポジティブにデザインされていて、すべてが関係性で成り立っているのであれば、愛を基にしたポジティブな関係性を保つことが、生物、いのち、にとっては一番良いこと。みんながそう思えれば戦争なんかはなくなると思う。そういった意味で教育はとても大切ですね。
ーISAKを作るときにも、教育とは本来そういったことを教えたり感じたりできる場所であるべきという話を私達ずっとしていましたよね。エドワードさんが具体的に大事にされている人間関係というのは、どういったものですか?
やっぱり、家庭ですね。他人同士が一緒になって、2人の子供らができたりして、家族っていうものができる訳だけれども、最初の2人が良い関係を持たない限り、すべてがマイナスにつながっていくと思う。2人の人間同士の間には摩擦を極力ミニマムに抑えて、ポジティブな仲の良い関係を保っていくことによって、その周りの社会との人間関係もうまくいくと思う。やっぱり家庭が地獄だったら生活できないし、一緒にいる意味もない。最小単位である家族、男女の関係がまず上手くいって、そこからだんだんと大きい社会に広がっていくことが一番大事な原点、スタートだと思う。
世界平和だとかそういうことを一生懸命言っている人たちが、家庭内の平和を保てないのであれば、そういったことを語る資格もないし、まず家庭の平和があってはじめてそれを広められる可能性があるわけですよね。
ーエドワードさんにとっての人間関係とは、家族、つまり百合子さんとの関係ということですね。それが核になってまわりにいろいろな核が広がっているというイメージですね。
結婚する前は、兄弟とか親との関係もそうでしたね。大人になれば1対1の男女の関係から広がっていくわけだから、そこで上手くいかなかったら何も始まらない。難しいんですよ、男女って。
デザインは「つくる」こと
ー5番目は「仕事」ですね。エドワードさんは先ほどから、デザインという言葉を多く使われていますが、お仕事の建築に限らず、ありとあらゆることをデザインに結び付けていらっしゃいますよね。
僕が言うデザインっていうのは、「つくる」という行為のことだと思っています。小さいときから絵が好きだったんだけれど、絵もひとつのつくるという作業。何もない白紙の中に描かれていくものが生まれてくるわけでしょ。その喜びっていうのがある。今は墨絵をやっていて同じように感じるんだけれど、白紙から自分の手で描いていくものが一つの世界を作れるっていうことはすごい喜びにつながるんですよ。そういう意味でデザイン、つくるということが好きですね。
僕にとっては建築は趣味みたいなもので、僕の場合はたまたま建築が趣味=仕事になっているけれども、本来ひとりひとりみんな好きなものを仕事にしているべきだと思うんですよね。銀行家であろうとビジネスマンであろうと医者であろうと、自分がやっていることが大好きで大好きでしょうがなくて、情熱を注いで出来る仕事であるべきだと思う。そうでなかったらやっぱり、一生のことだから不幸せになっちゃうと思うのね。仕事や趣味を通して世に貢献できることが幸せにつながる。
うちに来るインターンや学生さんたちにはいつも「焦るな」と伝えています。果たして建築が自分に本当に向いてるのかどうかを見極めろ、もしチャンスがあれば他のものも触ってみたほうがいい、と言う。場合によっては他のことのほうが楽しくなるかもしれない。今は大学に入る時にどこに行ったらいいかわからなくてとりあえずって入る子もいるじゃない。これでよかったっていう子もいれば、まだちょっとわからないという子もいるわけで。本当に好きであれば続ければいいけれど、クエスチョンマークがあるのであれば、色々な分野をショッピングしたほうがいい。
男女関係も同じだと思う。「焦るな」って僕は若い奴に言います。人生100年だし、今の40代が昔の20代くらいの感覚でいればいいと思っているので、40歳まで待っていいんじゃないかって僕は思ってる。これからまだまだ長生きするわけだから、焦って結婚する必要はない。よくショッピングして、これだっていう人と結婚したほうがいい。仕事も男女関係も同じですね。
無からの創造
ー「つくる」という職業は絵を描いたりデザイナーだったり、いろいろあると思うのですが、その中で建築を長くやっていらっしゃるのは、無から何かをデザインすることが一番向いていると感じられるからでしょうか?
GOoD DESIGNは創造することだから、その小さな真似事みたいなものだけれども、行為としては同じようなもの。何もないところか作っていくっていう。それがやっぱりすごく楽しいですね。
ーエドワードさんの本来の専門はアーバンデザインとおっしゃっていましたよね?
アーバンデザインは建築の延長線上であって、建築の集合体なんですね。オープンスペースやインフラも含んだ延長線上なんだけれども、日本ではそういったことをやれる場がない。都市計画っていうのはどちらかというと数字を調べたりしてプログラムを作るようなものだけれど、アーバンデザインっていうのは建築同様、メガなスケールで都市をどうつくるかっていうデザインをすること。建築のスケールアップしたものなのであまり変わらないんですよ。
ー仕事の中で、神様の仕事に一番近いのがアーバンデザインと、オーケストラの指揮者と私は思っているんですけど。
そう、僕は音楽教育が全くゼロだったので、それがちょっと残念だったんだけれども、生まれ変わったら音楽家になりたいなと時々思います。音楽はユニバーサルに人の心を動かすもので、音を聞いているだけで感動を受けますよね。言葉はわからなくてもメロディだけで感じられるものがありますね。
ー原子構造の研究もされているんですよね?
今、東京理科大とIBMと一緒に取り組んでいるのがスーパーダイヤモンド。通常のダイヤよりも密度が2倍あるものは2倍固いんじゃないかという予測を、量子力学的に裏付けています。これもある意味、「つくる」ことなんです。自分が考えた原子構造論で、スーパーダイヤモンドが生まれてきた。だからこれもすごく楽しいですよ。