【第6回】梶原建二氏 ニールズヤード レメディーズ社長 vol.3
Date 2020.12.22
「あの人のウェルビーイング」では、谷家理香の周りの素敵な生き方をされている方達に、その方が考えるWell-Being Lifeとは?をインタビュー形式で伺った内容をご紹介していきます。今回はニールズヤード レメディーズ代表取締役 梶原建二さんにお話を伺いました。
プロフィール:大学卒業後、上場企業、イタリア家具メーカーのカッシーナを経て24歳で世界中からデザイン性に優れた生活雑貨を輸入する会社を起業。1985年にニールズヤード レメディーズを日本で販売開始。96年に日本初の直営店を恵比寿にオープンし、翌年ナチュラルセラピーセンターを開設。2003年に完成したエコロジカルな表参道グリーンビルは、2014年9月にニールズヤード グリーンスクエアとしてリニューアルオープン。100%再生可能エネルギーを使用した複合施設で、ショップ、レストラン、スクール、サロンの4つの空間を通じてホリスティックなライフスタイルを提案している。
→谷家理香氏 株式会社ウェルビーイングTOKYO代表取締役
→【第1回】高橋百合子氏 E.OCT株式会社代表取締役
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→【第3回】日沖健氏 日沖コンサルティング事務所代表
→【第4回】杉山文野氏 トランスジェンダー活動家
→【第5回】Rajshree Pathy氏 Rajshree Group of Companiesチェアパーソン兼マネージングディレクター
お金と健康があれば、あとはなんとかなる
-お金の次にあげられているのが「健康」。健康はお仕事の内容にもダイレクトにつながっていらっしゃいますね。
お金の次に出てくるのは1番大きいのは健康ですね。健康っていう言葉は今までは病気になった人が使う言葉だったんですよね。僕がニールズヤードをやり始めた時は、健康について考えるのは病人だけという時代だった。健康という言葉が自然に使われ出したのは、ほんの最近ですよね。マズローの法則(欲求の5段階)で言われているように、家もあって食べ物もあるという満たされた状態になったから求められてきたんでしょうね。社会が成熟してくると人は内面に向かいますよね。内面に向かったら、自分が生き生きとして、毎日幸せだなって実感できることが健康だと多くの人が考えるようになった。それによって、健康っていう言葉が変わってきて、多くの人がポジティブにとらえる言葉になってきたと、僕は思うんですよね。
-なるほど、それはおもしろいですね。今は人生そのものが長くなったということもあるかもしれませんが、わりと普通にみなさん健康に日々を過ごしたいと思っているかと思います。体の健康だけでなくマインドの健康も言われ始めています。
みんなが言う健康というのは、健康な肉体というよりも、どちらかと言うと、ささやかというか、生き生きと生きがいを見つけて、やりたいこともあって、なおかつそれをできる自分がいて、楽しんでいる自分がいて、それをやっぱり健康なんだよねというふうに僕は理解しています。昔は健康とは病気でないことっていう定義だったんですよ。でも、今は生き生きと輝いて、前向きに生きること、それが健康ですね。
「仕事」は幸せを感じるための作業
-お金、健康、の次には何が来るのでしょう?
健康が全てに連動してきますよね。人間の体は食で出来ているから、食べ物は我々の健康にも直接繋がるし。僕からすると、健康であれば、他のものは人間関係、仕事、愛とかっていろいろあるけど、なんとかなりますよね。
-なんとかなるんですね。すべてお金で買えるかもしれない?
お金と健康があったら、人間余裕が生まれるよね。
-幸せだと感じるときは「自分がやりたいことが仕事になっていること」とおっしゃっていたので、仕事は重要な位置を占めていらっしゃるのかなと思っていました。
僕、今やっていることも仕事だとは思ってないんですよ。仕事っていうのは対価を得るための作業ですよね。僕は対価を得るための作業だと思っていないので。これは幸せを感じるための、自分の時間の使い方だから、もう全然仕事だと思ってない。あれもやりたい、これもやりたい、ってアイデアがどんどん出てきて。若いときは前後考えずに何でもやってきましたけど、今は考えるようになってきました。
年を取って、次世代への良いモデルになる必要はないけれど、次世代の人にインスピレーションを与えられる存在になるというのはすごく大事なことだと思っています。そういう人がたくさんいると、人生長らく生きていても良いことがあるのかなって、なんかおもしろそうだなって思いますよね。周りにそういう人がいないと、年取っていくっていうのはエネルギーもなくなって、考え方も古くなって、やっぱり下がっていくのかな、みたいに見えるじゃないですか。
-たしかに日本はダイバーシティ(多様性)がやや欠けているので、こうじゃなければいけないという決まりごとが海外に比べて多くありますよね。同じグループの中での一番が大切になっています。
今後日本が輝いていく為にはこれは1番大きな問題なので、もっとグループに属性を持たない人が出ていった方がいいですよね。
-梶原さんのような方がロールモデルとしていらっしゃるというのは勇気づけられます。
若い人にもチャンスや多様性を伝えていきたい
-梶原さんにとって人生の目的(目標、使命、ゴール、目指しているもの)は何ですか?
先ほどの話に通じますが、前は自分勝手に自分のやりたいことをとにかくやっていたけれど、今は次の世代に自分が若い時に感じたようなチャンスがあるんだということを分かってもらえるような機会を与えたいと思っています。上にいる人とか、年取った人がそういうことをやっているのを見て、限りない可能性とオプションがあるんだなっていうふうに思ってもらえることでしょうね。
-ニールズヤードのお店を中心にした活動ですとか、オーストラリアの森林火災への寄付などフットワーク軽く、いろいろ活動をされていらっしゃいますね。
それも1つのサンプルとしてやっていることですね。あとはクライメート・リアリティの啓蒙活動もそうですね。アル・ゴア元副大統領が立ち上げたクライメート・リアリティ・リーダーのトレーニングを2年前に受けて、今はいろいろなところで、無償で環境セミナーを行っています。去年は16回くらい行ってますね。
-それはどういった人達に向けて行っているのですか?
メディアや企業向けなどいろいろですね。この前はWWDの企画でオンラインでもやりました。社内で環境問題についての意識を高めたいが、社内では講師がいないので、やってくれないかという依頼がきます。
-内容はどういったものですか?
基本的には地球温暖化と再生可能エネルギーと、食ですね。SDGsのように17項目をどうしましょうかみたいな話ではなくて、どちらかと言うと実際に起きていることを具体的に数字で勉強しながら客観的に見てゆき、ソリューションを提案していくという内容です。
-例えば今日私が家に帰ってから出来ることは何かありますか?
ありますね。まず、スーパーに行ったら、賞味期限の短いものを選ぶことですね。
-あー、つい1番奥から引っ張り出してしまっています(笑)。
みんなそう。だけど、そんなの2日ぐらいの差なんですよ。でも、最終的に何につながるかと言うと食料廃棄ですよね。
-なるほど。
僕のセミナーは、誰が悪いっていうセミナーではないんですよね。あなた、環境に良いことやってますか?みたいな問いかけは一切ありませんから。
-現状を学んで実行できるという内容なのですね。
そうです。うちの会社も、ものを作って、輸入して販売している限りはCO2を出し続けているし、環境には悪いこともしているわけですよ。ビジネスが上手くいけばいくほど、環境負荷が高くなるので、本当に参加してほしいのはビジネスが上手くいっている会社なんです。昔は気候変動とか、環境問題っていうのはビジネス以外の人が戦うもので、善か悪か線引きして悪者を叩いていました。今は違いますよね。もう全員の問題であって、なおかつ、僕は本当に思うけど、高額所得者であればあるほど、やるべきですよね。社会的地位が高ければ高いほど、本当は知っていかなきゃならない問題ですよ。なぜかと言うと、その地位とか社会的名誉、お金とか財産も、全部環境負荷を与えた結果だからです。
-原因と結果じゃないですけれど、結果があるなら、そこに対して還元するという考え方ですね。
そういうこと。だから、僕は社長としてやっているんですよ。社長がそういうことをやると非常に矛盾だろうというふうに言われるんですが。ビジネスを大きくすると結果として環境の負荷がかかるもので、意図的にやっているわけじゃないんですよね。それに対して大企業であればあるほど、還元していく必要があると考えています。環境への取り組みを語るのは企業にとってノイズではなく、心地よい音楽とすべきです。
あと、上の人間がやらない限りは中間層の人がやらされていてもやりにくいですよね。SDGs部課長みたいに突然言われても、バッジをつけたって他の部署からは余計なこと言うなよ、みたいに言われるじゃないですか。短期的には会社の利益から言えば相反する場合もあるかもしれないけれど、長期的にみると、会社としてのバリューも上がるし、会社としての付加価値も高くなるし、結果的には会社の健康的な売上には繋がるんですよね。